東京2020オリンピックの花火が小型煙火による演出のみに留まった理由
花火系散歩屋のおーわ(@mof_mof08)です。
東京2020オリンピックおよびパラリンピックの開会式・閉会式では国立競技場(オリンピックスタジアム)の上屋から花火を噴射する演出が見られました。
しかし、2021年8月21日にsmart FLASHに掲載された記事をはじめ、SNSなどからも「思っていたよりもショボい」「伝統の大玉花火を打ち上げるべきだった」といった声が多く聞かれました。
全国各地の花火大会で見られるような打ち上げ花火がガンガン打ち上がることを期待していた方からすれば、ずいぶんショボい花火だなーという感想を抱くのは無理もない話かなと思います。
では、いったいなぜ小規模な花火に留まってしまったのか…本記事ではその理由についてざっくりと紹介してまいります。
東京2020オリンピックの開会式・閉会式の花火が小規模に留まった理由
さて、東京2020オリンピックの開会式・閉会式で披露された花火がなぜ小規模なものに留まったのかというお話ですが、これには大きく二つの要因が挙げられます。
- 法律による制約
- 国立競技場周辺の環境
早い話が、大きな花火を安全に打ち上げられる場所がなかったと思っていただくと分かりやすいんじゃないかなと思います。
法律による制約
東京2020オリンピック・パラリンピックの花火が小規模になった一つ目の要因として、法律による制約が挙げられます。
花火は安全確保という観点などから、火薬類取締法施行規則という法律に従って打ち上げることが求められます。
火薬類取締法施行規則には花火打ち上げに際する事項がもろもろ記されていますが、その一つにあたる第56条の4第4項第1号には次のような記述があります。
打揚煙火の打揚筒及び仕掛煙火の設置場所は、消費する煙火の種類及び重量に応じて、通路、人の集合する場所、建物等に対し安全な距離をとること。
なんだか古代の呪文のような文章が書かれていますが、花火を打ち上げるなら観覧場所や建物から十分に距離を取ってくださいねということです。(これを保安距離といいます)
具体的な保安距離については都道府県の条例で定められていて、東京都における煙火の消費に関する基準には保安距離について以下のように記されています。
大きな花火を打ち上げるには、それに応じたスペースが必要になってくるというわけなのです。
国立競技場周辺の環境
二つ目の要因として、東京2020オリンピック・パラリンピックの開・閉会式が開催される国立競技場周辺の環境が挙げられます。
地図をご覧いただくと分かるように、国立競技場の周辺は建屋が密集していることが見て取れるかと思います。
先述でも触れたように、国立競技場周辺で10号玉を打ち上げようとした場合、打ち上げ場所の周囲に240m以上の距離を確保する必要があります。
本記事では神宮外苑花火大会の実績から第二種地区(2級)と仮定していますが、国立競技場周辺が第一種地区(1級)に該当する場合、必要な保安距離は290mとなります。
神宮外苑花火大会で割物花火の打ち上げ実績のある神宮第二球場(例1)、比較的スペースが確保しやすい陸上競技トラック(例2)から打ち上げると仮定した場合、どちらにおいても保安距離の範囲に建屋などが避けられないことが見れ取れます。
とどのつまり、国立競技場の周辺にはスペースがなく、10号玉(尺玉)のような大玉花火を打ち上げるのは無理ゲーだったということがお分かりいただけるかと思います。
国立競技場周辺において割物花火の打ち上げができないのかというとそういうわけではなく、毎年8月に至近で開催されている神宮外苑花火大会において割物花火(最大3号玉)の打ち上げ実績があります。
それでも割物花火の打ち上げが一切なかったのは、打ち上げ場所となっている神宮第二球場がオリンピック・パラリンピック関連で使用されていたためと見られます。
まとめ
ショボいという声が多く聞かれた東京2020オリンピック・パラリンピックの開会式および閉会式の花火。
国立競技場上屋からの小型煙火による演出に留まった理由としてはざっくり以下の2点となります。
- 法律による制約
- 国立競技場周辺の環境
オリンピックという国際的な祭典において日本伝統の割物花火がなかったというのはいささか寂しい気持ちもありますが、諸々の制約がある環境の中で花火が披露されたのはむしろ奇跡だったともいえるかもしれません。
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